さよならの季節、ゆれる気持ちが向かうところ。【自然の道具箱 Vol.3】

 

 #不安の解消法  #環境の変化  #暮らしを楽しむ #身近な自然

出会いや別れ、環境が大きく変化するこれからの季節。
気持ちが落ち着かない時には、外を歩いてみるのがおすすめです。道端の花や草木がヒントをくれるかもしれません。

 

最終更新日   2023/3/8
執筆・写真 Atsuko Ebizawa

 

 

春になったら、この町を去る。


赤ちゃんだった息子と
よく歩いた森の散歩道。


お気に入りの古本屋さん。


賑やかな駅前の商店街。


あとここに
何回来られるのだろう。


引っこしが決まってからは
いつもの日常が
思い出づくりに。


この3年ですっかり「わたしの町」と
思えるようになったのに
また振り出しに戻ってしまう。



 

 

家族のこと、働き方、
これから暮らす家のこと。


転勤家族のわたしたちにとって
引っこしは慣れたものだと思いつつも、
未知なことが多すぎる。


わからないという不安が
気持ちに負荷をかけている。


なんとなくイライラしてしまって
反省することも多いこの頃。




 

散歩をしながら、
この町に来たときのことを思い出す。


満開の桜がわたしたちを歓迎してくれた。


どの花もこちらを向いて
「ようこそ」と、
にこやかに笑いかけて
くれているように見えた。


季節が巡るごとに
地域の人とのつながりもできた。

 

 

 

毎週土曜日の朝市。農家さんのお野菜を買いにいく。


言葉を交わすうちに
近所の小学生やおばあちゃんの名前も覚えた。

 


公園、図書館やカフェ
お気に入りをたくさん見つけた。


やっぱり、この町がすき。

 


わたしは、
「この町いいな」の見つけ方を
もう知っている。


心を開いて、
たくさん歩いて、
ほっとできる場所を
見つければいいだけ。

 

 

 桜の木を今見上げると、
枝の先から小さな花の芽。


まるで空に腕を伸ばして
手のひらを広げ、
光を求めているよう。


気持ちがぐらつくときのお手本は
凛と地に足をつけている
草木だったり、花だったりする。



春からは、新しい暮らし。


光のほうへ。
明るい方へ。


桜の木にならって、
わたしも手を伸ばしてみよう。

 

 

 

 Profile

海老澤敦子 Atsuko Ebizawa

1988年、兵庫県出身。革作家。
小学校教諭として在職中に、JICAボランティアとしてエチオピアへ(2015~17)。教育に携わる仕事を経て、2022年よりフリーランス。エチオピアレザーを使ったアクセサリーや革小物の制作と販売をしている。

Instagram  @atsuko_today

 

 

さよならの季節、ゆれる気持ちのお供におすすめアイテム
ウッドディフューザー[桜]

 

 

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エッセイ連載 ”自然の道具箱"

 

Vol.1  巡らない朝に、森の空気を
Vol.2  生活のオノマトペ
Vol.3  さよならの季節、ゆれる気持ちが向かうところ。
Vol.4     家を好きになるために、小さな自然を暮らしの中に
Vol.5    手を眺めながら思うこと。
Vol.6    哀しみに寄り添う雨の景色
Vol.7    一杯のみそしる
Vol.8    夏の自然に、涼を求めて。

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