手を眺めながら思うこと。【自然の道具箱 Vol.5 】
#マインドフルネス #身体感覚 #暮らし
季節の変わり目であるこの時期は、1年の中でも特に疲れやストレスが溜まりやすいと言われています。そんな時には、自分の身体感覚や心の動きを観察してみましょう。手を通して、日常の「今、ここ」を感じてみませんか。 |
最終更新日 2023/5/31
執筆・写真 Atsuko Ebizawa
手ってすごい。
自分の手を眺めながら
時々そう思うのです。
たとえば、ものづくり。
切ったり、組み合わせたり、
折ったり、縫ったり。
素材がわたしの手を通して
暮らしの中で役立つものや
愛しいものに形をかえる。
たとえば、書くこと。
頭の中に浮かんできた言葉のカケラ。
そのうち消えてしまうけれど
手を動かして、
文字にすれば
誰かに届けられるかもしれない。
たとえば、手当て。
痛いところに手を当てて、
空に投げる。
泣きやむ息子。
不思議と痛みが和らぐみたい。
たとえば、料理。
わたしの手を通してできた料理が
家族のからだをつくっている。
限りある時間の使い方を 手から見つめ直してみたい。
頭の中の空想や
わたしの思いを
外の世界に届けてくれる
わたしの手。
大抵のことは
AIで代用できるこの時代に
何に、
誰のために、
わたしの手を使いたいのだろう。
葉を広げ
太陽のエネルギーを受け取って
酸素を放出する植物のように。
両手をひらいて、
今あるものを存分に受け取り、
喜びを、優しさを
循環させるために使いたい。
暮らしも、仕事も、
この手のおかげで
ほんとうに楽しい。
使うたびに、
わたしの手への信頼度が増していく。
わたしの手、
これからも頼りにしています。
Profile 海老澤敦子 Atsuko Ebizawa 1988年、兵庫県出身。革作家。 小学校教諭として在職中に、JICAボランティアとしてエチオピアへ(2015~17)。教育に携わる仕事を経て、2022年よりフリーランス。エチオピアレザーを使ったアクセサリーや革小物の制作と販売をしている。 Instagram @atsuko_today |
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エッセイ連載 ”自然の道具箱"
Vol.1 巡らない朝に、森の空気を
Vol.2 生活のオノマトペ
Vol.3 さよならの季節、ゆれる気持ちが向かうところ。
Vol.4 家を好きになるために、小さな自然を暮らしの中に
Vol.5 手を眺めながら思うこと。
Vol.6 哀しみに寄り添う雨の景色
Vol.7 一杯のみそしる
Vol.8 夏の自然に、涼を求めて。