誰でも輝ける場を作りたい | 就労継続支援B型事業所たんぽぽ 友松さんインタビュー

Phnom Toi(プノントイ)をもっと知るためのインタビュー企画が始まりました。第5回目の今回は、「ヒノキローズBOX、フラワーディフューザー、ヒノキローズブーケ」の制作でご協力いただいている、就労継続支援B型事業所 友松さんの活動を紹介します。友松さんが事業所を始められたきっかけや、今後目指していきたい事業所の在り方、そしてPhnom Toiが微力ながら、そこにどのような形で関わらせていただいているかを紹介します。

 
最終更新日 2023/9/28

インタビュー・執筆 アヤノ



友松雛(ともまつ ひな)
神奈川県横浜市で高校卒業後、大学へ進学するも中退し、就職をして営業職に従事。
その後、大阪に引っ越し介護職に従事。そこで就労支援事業者と知り合い勉強後、就労継続支援B型事業所たんぽぽを起業。

 

 事業所を始めたきっかけは環境と出会い


――友松さん本日はよろしくお願いいたします。まずは、就労継続支援B型事業所たんぽぽさんの事業概要について教えてください。

 

就労継続支援B型事業所たんぽぽは、精神、知的、身体障がいなどハンディキャップを持った方が、就労訓練をする場所です。ここに来られる方は、一人ひとり目的が違います。コミュニティが欲しい方、自身のスキルを上げたい方、一般就労を目指す方など…

皆、集まった目的は違いますが、やりがいや役割を持つことでキラキラしています。利用者さんそれぞれの夢の実現や社会参加を、スタッフが寄り添いサポートしています。

 

――現在は、何名のスタッフの方と利用者さまがいらっしゃるのですか。

スタッフは私を含めて5名、利用者さんは20名います。利用者さんは、リモートワークも取り入れているので、勤務時間などはきっちりと決めず、目的に合わせて自分のペースで働いています。

たんぽぽの利用者さまとスタッフの方々

 

――友松さんが事業所を始められたきっかけを教えてください。

小学生の頃から、漠然と「何かの社長になりたい」という夢がありました。必ず就労支援の事業がしたいという訳ではありませんでしたが、偶然にも福祉関係の仕事をしている人に出会うことが多く、「これが自分のするべきことなのだ」と直感で思いました。

 

――具体的にどのような経験や出会いが、その直感に繋がったのでしょうか?

 

子どもの頃に、可愛がってくれていた親戚が統合失調症により自殺し、近所の友達には自閉症の子などハンディキャップを持った方と関わる機会がよくありました。

また、高校の頃に仲良くしていた友人が大学生になった時に、精神病になり外に出られなくなってしまいました。彼女は高校時代にチアリーディングをしていて、とても明るく優しい子でした。私はその時、「あんなに輝いている子が家に引きこもっているのはもったいない。引きこもりになった方たち、ハンディキャプをもった方たちと一緒に社会参加していきたい。」と思うようになりました。そこで自分が社長となり、誰でも輝ける場を作ろうと決意しました。

 

 

苦労を乗り越え、理想の事業所の実現に

 

――これまで事業を進めていく中で大変だったことは何ですか。 

 

支援員として、どこまでやっていいのか分からなかったことです。

一度、利用者さんから夜にLINEが来て、連絡が返せなかったことがありました。翌朝、確認をすると「友松さんがいないと死にます。」といった趣旨のメッセージが。そこから2日間連絡がなかったときは、心臓が出そうでしたね。

その後、連絡が取れて無事だったのですが、当時は「自分が連絡をしなかったせいで…」と最悪の場合を想定してしまいました。しかし、スタッフも24時間対応ができるわけではないし、1人の子につきっきりになることも出来ません。そのような仕事と私生活との境界線をどうつけるのかが難しいです。

 

 

――事業所は今年で3年目とのことですが、これまでに悩んだ経験から新たに学んだことはありますか。

やはり、自分の言動の大切さや重みなど、経営者としての悩みが多いです。始めた当時は、ただがむしゃらに走っていましたが、方向性や考えがスタッフと合わない時も多々あります。

事業を始めて3、4か月目から、それぞれの方向性を確かめ合うために話し合いが大切だと気づきました。今は全体会議と別に、スタッフと月に1回、1対1で面談をするようにしています。そこで意思や方向性を確かめ合います。

福祉の在り方は、一つではありません。支えることが福祉なのか?選ばせてあげることが福祉なのか?やってあげることだけが福祉ではなく、できないことをできるようにしていくことが福祉だと私は思います。

自分たちの思いをぶつけてくれるスタッフに感謝しています。

 

 

――苦労もある中、嬉しかったことも多くあると思いますが、どんなことですか?

利用者さんに「やっと家以外に自分の居場所が出来た」と言ってもらえたことがとても嬉しかったです。

自分が事業所を作るうえで、温かくてみんな仲のいい空間にしたかったので、利用者さんも居心地のいい場所だと思ってくれているのは嬉しいです。

また、これまで3人の方を一般就労に送り出したのですが、少し行き詰ってしまったときに、いつでも戻ってこられるような場所であり続けたいと思っています。「行ってらっしゃい・おかえり」といつでも言える関係にしておくことは大事にしています。

 

――思い描いていた理想の事業所に近づいていると感じますか?

そうですね。人数の多い福祉施設というよりも、まるでクラブ活動や大家族のような、理想としていた温かい事業所になっているなと感じます。

 

 

1人1人の個性を生かす環境づくり

 

――障がいを持つ方にも得意なこと(仕事)があると思いますが、例えばどのようことですか? 

これは、人や障がいによっても違います。一つのことを根気強くできる方や時間に忠実な方など。一人ひとり得意なことは違うので、新しい作業を始める時は、はじめに全ての工程を少しずつやってもらい、自分の得意分野を探していきます。

 

 

――利用者さま1人1人の個性や得意を引き出すために意識されていることはありますか。 

全ての作業を工程化することです。作業を分担して役割を持つことで、成果ややりがいを実感しやすくなります。短所は長所という言葉がありますが、まさにその通りだと思います。一人ひとりの個性をいかに生かしてあげられるか。スタッフは利用者さんを輝かせますし、利用者さんもスタッフを輝かせてくれます。

 

 Phnom Toiアイテムの制作について

 

――「ヒノキローズBOX 」の制作の様子を教えてください。

Phnom Toiのアイテム制作は、女性チームで行っています。手芸部のように楽しくワイワイお話ししながら作業をしています。

 

 

――この商品の制作の、特に難しい点、こだわっている点はありますか? 

バラ選びとバランスが特に難しいです。現在は、利用者さん同士であれどう?これどう?と意見を交換しながら作業に取り組んでいます。

また、最初はかんな屑の保存方法が分からず、変色、カビ、日焼けなどに悩みました。それ以外にも、輸送中に崩れないようなバランスなど、実際に作ってみて知ることは多いです。経営者として、資源を無駄にしたくないという吉成さんの気持ちは強く共感できるので、なるべく材料のロスを出さないよう気を付けています。


 

――この商品の制作で、利用者さまの技術が特に生かされている点はどこですか?

それこそ、それぞれの工程で自身の得意なことが発揮されていると思います。

お手本通りに作るのが得意な方、バラづくりが得意な方、ワイヤリングが得意な方、バランス感覚がある方が集まり、一つのモノを完成させています。

ヒノキのかんな屑からローズを作っている様子

 

――たんぽぽさんが、この商品を制作することで得られるメリットはありますか?

 

利用者さんの成長やコミュニケーション力の向上に繋がっていると感じます。みんなで1つのモノを完成させるという工程の中で、教え合ったり会話が増えたり。チームワークや役割意識が芽生えています。

 

 

――利用者さまから、作ってみたご感想をいただけたるようでしたらお願いします。

 

「バラ作りは色々な方のアドバイスを聞いて最初の頃よりうまく作れるようになったと思います!ヒノキローズBOXは、選んだヒノキローズによってその他の花材を使う量が変わるので、バランスよく作るのが難しかったです。」

また、ヒノキローズブーケの制作で苦戦しているときに、吉成さんが直接会いに来てくれたことがありました。難しい作業だと共感してもらえたこと、感謝をされたことに喜んでいました。社会との関わりとは、まさにこういうことだと思いました。なので、また会いに来てください!(笑)

 

 

友松さんが目指す今後のたんぽぽ

 

――事業所としての今後の目標を教えてください。

 利用者さんには、同世代の子が多いのでみんなで年を重ねたいなと思います。

そして、それぞれのスキルを活かし続けられる場所にしたいです。ここに初めて来たときは夢がなかった子が、今は夢があります。

今現在、引きこもっている子がここならいけるかもという事業所を作っていきたいです。

 
みんなでフラワーディフューザー-KONSTSU-を制作している様子 

 

 

――その目標達成にPhnom Toiとしてお力添えできるとしたら、どんなことですか?

 

新商品の色味や形、名前などみんなの意見が出せる場があると嬉しいです。本当に面白いアイデアを持った方が多いので、意見を採用してもらえる場所があると利用者さんも喜んでくれると思います。

 

 

 

編集後記

 閑静な住宅街を歩いていると、可愛らしいマフィンがずらっと並んだショーケースを発見!たんぽぽさんでは、利用者さまの手作りカップケーキを事業所の前で販売しています。季節限定など、味のバリエーションも多く、私もインタビュー後に6つ購入し、美味しくいただきました♪

共に楽しく仕事に励む利用者の皆さまと友松さまの素敵なご関係性に触れ、フラワーディフューザー等の商品がここから生まれていることを嬉しく感じました。

たんぽぽさんで販売されている手作りカップケーキ


 

 Profile

アヤノ

 


2000年、静岡県出身。大学4年生。
大学では児童文学や国際関係などを英語で学ぶ。2021年には長年の夢であった留学のためにドバイに9ヶ月滞在後、翌年12月よりPhnom Toiにインターン生として活動に携わる。
好きなものは、コーヒーとスイーツ。

 

  

インタビュー記事更新のお知らせはPhnom Toiの公式LINEから受け取れます。

友だち追加

 

インタビュー企画


Vol.1  里山とまちを繋ぎたい。めぐる自然の中でわたしの役割を見つめ続けた10年間。|Phnom Toi 誕生ヒストリー
Vol.2  好きを仕事に。あなたに寄り添うお花のスペシャリスト|フラワーデザイナー Yokoさんインタビュー
Vol.3  職人が生み出す 地球にやさしいモノづくり|木工職人 竹田さんインタビュー
Vol.4  山と人を繋げたい 環境にやさしい精油づくり|杉乃精 村山さんインタビュー
Vol.5  誰でも輝ける場を作りたい|就労継続支援B型事業所たんぽぽ 友松さんインタビュー

Back to the top